W杯に向け進歩が見えたゼーフェルト合宿
「ゆとり調整」には一抹の不安も

元川悦子

日本代表、オーストリアから決戦の地ロシアに発つ

13日にオーストリアでの合宿を打ち上げ、宿舎で現地スタッフと記念撮影

13日にオーストリアでの合宿を打ち上げ、宿舎で現地スタッフと記念撮影【写真は共同】

 2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会の本番に向け、6月2日(現地時間、以下同)からオーストリア・ゼーフェルトで行われていた事前合宿が13日に終了した。日本代表は同日昼過ぎに宿舎を発ち、午後のチャーター便でインスブルック空港から、ベースキャンプ地のカザンに入った。


 出発直前、メディア対応に臨んだキャプテン・長谷部誠は「こういう素晴らしい環境を整えてもらったことは選手として感謝しなきゃいけない」とすがすがしい表情でコメント。西野朗監督も「日本でキャンプをしていた時の状態に比べると、選手たちのフィジカル、メンタルの捉え方が(前向きに)変わってきている。本番まであと1週間ですけれど、さらにいい状態に持っていけるんじゃないかと思います」とあらためて手応えを口にした。前日に行われたパラグアイとの国際親善試合で18年初勝利を飾ったことで、チーム全体が明るい雰囲気に包まれている様子がうかがえた。


 12日間を振り返ってみると、選手たちはトレーニングを合計8日消化した上で、8日のスイス戦(ルガーノ)と12日のパラグアイ戦(インスブルック)を戦った。限られた調整期間だったが、指揮官は最初からメンバーや戦い方を固定するのではなく、システムやメンバーを入れ替えながら多様な選択肢を追求するというアプローチを選択した。


 5月31日のガーナ戦(日産スタジアム)でトライした3−4−3の新布陣に、ゼーフェルト入り直後の3日にも早速取り組んだことが、西野監督の強い意思を色濃く表していた。


「4バックはずっとやってきたので、今は3バックを極めたいということだと思う。僕自身はそこまで不安はないです」と長友佑都が前向きに語っていたように、選手たちも指揮官の要求に応えようと躍起になっていた。しかしながら、「本番まで3週間しかないのに、3バックと4バックの併用を目指すのはリスクが高すぎる」と危惧する声も報道陣の間からは多数聞かれ、先行きが懸念されていた。

課題と「悪い癖」が出たスイス戦

本田がトップ下で先発したスイス戦は、攻撃陣が不発で0−2の完敗

本田がトップ下で先発したスイス戦は、攻撃陣が不発で0−2の完敗【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 指揮官自身も時間が足りないという意識はあったのか、4日からは慣れ親しんだ4−2−3−1に戻して、連係やコミュニケーションを高めていく形に切り替えた。「監督も4バックがベースだと言っている」と長谷部も強調し、こちらに軸足を置くことが明確になったことで、選手からも安堵(あんど)感が見て取れた。練習を重ねるごとに「まずはスイス戦をやってみて、自分たちの問題点を整理したい」という意識も高まり、チーム全体がいい緊張感を持って、本大会出場国であるスイスとのゲームを迎えることができた。


 この一戦で、西野監督はヴァイッド・ハリルホジッチ前監督体制から軸を担っていた川島永嗣、吉田麻也、長友佑都、長谷部誠らを先発起用。トップ下には4年前の14年W杯ブラジル大会以来の本職復帰となる本田圭佑を据える形でスタートした。だが、この日は前線と後方でプレスのかけ方にズレが生じ、1トップの大迫勇也が単独でボールを追い回すような状況に陥ってしまう。孤立した結果、前半途中に打撲で負傷交代した彼は「守備で走らされて前の選手は大変だった」とストレートに問題点を指摘した。


 大迫が下がった直後に酒井高徳がブリール・エンボロにサイドを突破され、吉田がPKを献上して1点を失い、後半にも自らのCKから逆襲を食らって2点目を奪われるというミスの連鎖も、最近の日本代表の悪い癖。攻撃の迫力も出し切れず、ロシア本番に暗雲が立ち込める0−2の敗戦になってしまった。

元川悦子

著者名
元川悦子
著者紹介文

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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