戸田和幸が5バックを薦める3つの理由
日本がスイス戦で露呈した対応力の低さ

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戸田和幸さんがデータを用いて日本代表のスイス戦を解説

戸田和幸さんがデータを用いて日本代表のスイス戦を解説【Getty Images】

 サッカー日本代表は8日(以下、現地時間)、スイス・ルガーノのスタディオ・コルナレドで、ワールドカップ(W杯)ロシア大会に出場するスイス代表と国際親善試合を戦い0−2で敗れた。日本は「4−2−3−1」の布陣で臨み、前半42分に吉田麻也が与えたPKをリカルド・ロドリゲスに決められて先制を許すと、後半37分にCKからカウンターを受け、最後はハリス・セフェロビッチに追加点を奪われた。


 この試合をデータスタジアム株式会社のデータを用いながら、サッカー解説者の戸田和幸さんに分析してもらった。戸田さんは「中央を割られている」「間に入られている」「カバーリングが遅れる」という理由から「後ろは5枚にした方がいい」という。また、日本は西野朗監督が就任してからの2試合で得点を挙げることができていない。攻撃ではどんなプレーが重要なのだろうか。

スイス代表にとっての日本戦の位置付け

 この試合の話をする前に、スイスは3日にスペインとテストマッチを行っています(結果は1−1)。スターティングメンバーを見比べてみると、スペイン戦に比重を置いているのは明らかです。「4−2−3−1」で非常にソリッドな守備とグループとしてボールを保持しながらスペースを作り走るというサッカーを展開していました。


 W杯では17日にブラジルとの初戦を控えるスイスにとっては、間違いなくスペインとの試合が最後のテストマッチ、日本との試合では(ロマン・)ビュルキ、(レモ・)フロイラー、(マリオ・)ガブラノビッチ、(グラニト・)ジャカといったスペイン戦に出場していなかった選手をスタメンに起用し、再度チェックを行うという位置付けの試合だったと思います。


 その中でも、アーセナルでプレーするジャカはこのチームの中心メンバーの1人ですが、今シーズンは調子が上がらずパスミスでリズムを壊してしまう試合が多かった。シーズンの最終戦には出場していましたが、コンディションに問題があったのかスペイン戦ではベンチ入りもしていません。最後の調整試合ということで日本戦はピッチに立ったものの、単純な技術ミスが多く、パフォーマンスレベルはかなり低かったと思います。この試合でのジャカのパフォーマンスを受けて、ブラジルとの初戦にどういったメンバーを選ぶのか。ジャカが出場しなかったスペイン戦でのパフォーマンスが良かった分、ヴラディミル・ペトコヴィッチ監督の決断に注目したいと思います。

ロングパスに苦しんだ日本

プレーエリアのシェアと各選手の平均ポジション

プレーエリアのシェアと各選手の平均ポジション【画像提供:データスタジアム】

――スイス戦の日本代表の印象を教えてください。


 スイスはキックオフから積極的に前に出てきたので、日本はうまく試合に入ることができませんでした。3分には大島(僚太)がジャカに対してアプローチするも、後ろが連動せず、縦パスを入れられます。長谷部が遅れて対応したものの、(ブリール・)エンボロとガブラノビッチのワンツーから最後はフロイラーへスルーパスを通されました。幸いラストパスが少しだけ長かったのでフロイラーには合いませんでしたが、ジャカからの縦パスをきっかけとしたコンビネーションプレーによって完全に中央から崩されてしまいました。また、4分には(バロン・)ベーラミの強いプレスを受けた大島がロスト、ショートカウンターを受けるなど、日本はいきなりばたついてしまいました。


 日本はプレッシングの場面ではトップ下の本田(圭佑)を前に出して「4−4−2」の形を採り、高い位置から制限をかけにいき、何度かボールを奪うことはできました。しかし、スイスはジャカと横並びでスタートしたベーラミがディフェンスラインに降りて3バックを形成し、数的優位な状況を作ってビルドアップするなど、相手の状況を見てスムーズに対応し、効果的なビルドアップからの攻撃を仕掛けてきました。


 この試合のスイスには単純な技術ミスが特に前半は多く、例えば6分にはジャカの単純なコントロールミスからボールを回収し、長谷部から長友(佑都)に大きなサイドチェンジ、そこからクロスを上げて大迫(勇也)がGKと競った場面がありました。


 前線からある程度の制限をかけるアプローチはできていたものの、序盤もしくは前半の中で何回意図的に奪い、攻めるというシーンを作れたかというと、18分にジャカとフロイラーの近い距離でのワンツーを長谷部がインターセプトした場面、それから44分に武藤(嘉紀)の長いスプリントによるチェイシングから始まり、宇佐美(貴史)が(シュテファン・)リヒトシュタイナーに寄せて長友が奪った場面くらいだったのではないかと。


 先日のガーナ戦に比べればより高い位置からボールを奪いにいこうという姿勢は見られましたが、それが実際どのくらい効果的だったのかということは、また別の角度から見なくてはなりません。プレッシングではなくセットした時は、本田がジャカをマークすることになっていたと思いますが、徹底できていたかというとそこまでではない。7分には最終ライン近くまで下りて前を向いたジャカからロングパス一本で(ジェルダン・)シャキリまで通され、ディフェンスラインの背後を取られています。


 ファーストディフェンダーを決められずにロングパスでサイドを変えられたり、自陣深い位置まで侵入されてしまう場面が前半だけでも7、8回、相手センターバック(CB)や中盤からのロングパスで深い位置まで侵入されてしまうという光景は、3月のウクライナ戦でも数多く見られたので、見ていて非常に気になりました。


――ロングボールへの対処が改善されていないのは気になりますね。


 序盤はある程度、本田が前に出て大迫とともに仕掛けようという狙いは見えましたが、相手がオーガナイズを変えたときに効果的な守備体系を構築することはできていなかったのではないかと思います。


 次第にファーストディフェンダーが決められなくなり少しずつ下がり始めると、9分には右CBの(ファビアン・)シェアから長友と槙野(智章)の間を走るシャキリに通されます。この試合のように4バックで臨むのであれば、まずディフェンスライン4人の間に走り込まれる動きはしっかり消していかなくてはなりません。


 この場面では相手の右CBがフリーで持ち上がり、サイドバック(SB)のリヒトシュタイナーがウイングバック(WB)のポジションを取ります。そして右サイドハーフのシャキリはシャドーに近い、長友よりも内側の位置、ハーフスペースからボックス内に飛び出してきています。この場面では長友・槙野共にどちらがシャキリをつかむかはっきりせず、ボックス脇からフリーでクロスを上げられました。日本は全体としてバランス良く立ってはいたものの、次第にボールホルダーにアタックする選手を作ることができず、ボックス内へとフリーランする選手を捕まえられない現象が起き始めました。

日本はスイスのオーガナイズ変更に対応できず

 序盤はある程度プレスがかかったように感じたとして、スイスは日本の守備に対して割と早い段階でオーガナイズを変えました。SBが幅を取り両サイドハーフが内側、シャドーの位置に入るといった微調整を行った時に、日本は効果的に対応できていなかったと思います。すでに述べましたが、この試合のスイスのパフォーマンスレベルは決して高くはなかった。特に中心選手であるはずのジャカは、久々の試合ということもあったのでしょうが単純なミスが多かった。


 スイスのことを考える必要はありませんが、日本戦でのジャカのパフォーマンスのままブラジル戦に臨めば、勝ち目はないと思います。スイスは世界的なビッグプレーヤーがいない分、集団でコレクティブに戦うことで結果を残してきました。であれば、明確に力が上のブラジル戦では、ジャカではなくスペイン戦のように(デニス・)ザカリアをベーラミと組ませ、より守備から入ってコレクティブなカウンターを狙うかもしれませんね。


――SBが高い位置を取るのはコロンビア戦でも有り得るので注意が必要ですね。


 コロンビアも中盤の底もしくはインサイドハーフが斜めに降りてビルドアップに参加し、SBが高めの位置を取ってきます。SBが幅を取る時もあれば、(フアン・)クアドラードもしくはハメス・ロドリゲスが幅を取り、高精度のアーリークロスを上げてくることもあります。またはシンプルに(ラダメル・)ファルカオにボールを持っていき、キープして起点を作る。こういった攻撃の形をしっかりと頭に入れ、決してビルドアップに秀でているわけではない両CBにプレスをかけながら、いかにコロンビアのストロングを消すかが大きなテーマになります。

本田はボールを迎えにいく動きが多かった

スイス戦、本田圭佑のプレーエリア

スイス戦、本田圭佑のプレーエリア【画像提供:データスタジアム】

 攻撃ではトップ下に本田が入りましたがボールを受けに下がる動きが多く、どうしてもスローダウンしてしまっていました。ゴール方向に走ってスペースでパスを受けるのではなく中盤で数的優位を作る動きがほとんどで、1トップの近くでプレーする機会は見られませんでした。


 プレーエリアを見てみると、左サイドの低い位置が15%。ボックス内やその脇にはほとんど走っていないと出ています。中盤で数的優位を作りながら全体で押し上げ、アタッキングサードでコンビネーションという狙いがあったと思いますが、残念ながら試合を通じて効果的な崩しを見ることはできませんでした。守備面でも一つ前に出てプレス、またはジャカをマークするというタスクを担っていたと見ましたが、徹底はされていなかったですし、強度も足りなかったと思います。

スイス戦、宇佐美貴史のプレーエリア

スイス戦、宇佐美貴史のプレーエリア【画像提供:データスタジアム】

――同じように宇佐美貴史も下がってボールを受けている印象です。


 そうですね。彼もボールプレーヤーなので当然足元でもらうプレーが増えます。たくさん足元でボールが欲しかった宇佐美と、中央の本田の連係面でやりづらさはなかったのかどうか。


 36分には槙野が持ち上がったタイミングで宇佐美はハーフスペースに入り、長友が幅を取る形を作りましたが、同じタイミングで本田が宇佐美の手前のスペースまで下りてきてしまい、パスルートを消していました。相手を連れてきつつ、スペースを消してしまったので一度にパスルートと2人の選手が消えてしまい、トップ下のフロイラーに寄せられた槙野は仕方なくスペースにボールを捨てる選択をしました。


 この試合のスイスはすごく強いという印象はなかったですけれど、チームとして論理的に戦おうとしていました。ビルドアップの形を変えることもそうですし、フリーマンを作りスペースを狙ったロングボールを後ろからしっかりと狙って蹴ってきた。何本も嫌なボールが自陣深くまで入ってきましたが、ブロックを作って対峙(たいじ)した時の日本はそこを抑えられませんでした。


 19分には左CBのアカンジから対角のロングパスをシャキリに通されます。一発で深い位置まで運ばれ、遅れる形で長友と宇佐美で対応しましたが、サポートに入ったジャカにつながれボックスの角からフリーでクロスを上げられています。日本は守備で準備をしていても、振られて対応が遅れてしまい、フリーでクロスを上げられていました。


 22分にはベーラミが最終ラインに下り右のシェアにパス、インナーラップしたリヒトシュタイナーの動きによって外側でフリーになったシャキリからボックス内へと走るガブラノビッチへと浮き球のパスが出ています。パスが長くなりラインを割りましたが、意図的にフリーマンをサイドで作るグループとしての動きがありました。仮にガブラノビッチにつながっていたらボックス内でフリーで受けられていた場面です。ここもスイスが瞬間的に最終ラインを3枚にしてワイドに選手がいる状況を作りましたが、日本は対応できなかった。リヒトシュタイナーと入れ替わる形でサイドに開いたシャキリのところにパスが入った瞬間、すでにガブラノビッチは走り始めており、フロイラーを気にした槙野の背後に走られています。


 ビルドアップ時のオーガナイズに加え、スイスにはロングパスを使う明確な意図と精度がありました。25分には右から左へ大きなサイドチェンジ、フリーで受けたロドリゲスからアーリークロスが入るとガブラノビッチが槙野のマークを外し完全にフリーな状況でヘディングされました。どのエリアでも相手に寄せることもできず、ボックス内で1対1を作られ決定機を作られました。


 初戦でぶつかるコロンビアもこういったシンプルなアーリークロスをさらに高い精度で上げ、なおかつ決定力は格段に上です。何があろうとこういった展開は作られてはいけませんが、4バックだと速くて大きなサイドチェンジを使われるとクロッサーに対してしっかりアプローチするのは難しくなります。常に敵陣でプレッシングを行うことは難しいことも考えると、個人的にはやはりブロック時は5バックにした方が良いのではと考えます。

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