森岡亮太がロシアW杯で優勝を目指す訳
「目標を現実的に置く必要はない」

中田徹

日本代表とW杯について語る予定が、インタビューは意外な方向へ……

日本代表とW杯について語る予定が、インタビューは意外な方向へ……【Getty Images】

 今回の森岡亮太インタビューは、ワールドカップ(W杯)をテーマにするはずだった。事実、森岡と私のやり取りはW杯を軸に進んでいく。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任もあって、今は選手にとってデリケートな時期だ。そんな中でも、森岡は答えられる範囲内で、丁寧に質問に応じてくれた。


 だが、私のある質問から、インタビューはW杯からやや趣旨を外れていくことになる。W杯では優勝を目指すという森岡に、私が「現実的にはどうでしょうか」と聞いた。森岡が「『現実的に』とは、どういうことですか?」と答えた。ここから、2人の間の空気がガラリと変わった。


 森岡は、なんとか私を理解させようと、手を変え品を変え説明してくれた。「僕がポーランド時代にアンデルレヒトを目指していたら、今のアンデルレヒトの自分はいなかったはず」という一言で、私には彼の言いたかったことがストーンと落ちた。ブリュッセルから、オランダにある自宅への2時間半の道すがら、私は森岡とのインタビューの最後の部分を何度も頭の中で繰り返した。もう、ICレコーダーで彼の言葉を聞き直す必要がないぐらいに。


 森岡は結局、「現実的にはどうでしょうか」という質問に答えなかった。そのことが、むしろ尊いインタビューになった。(取材日:4月30日)

あくまで「10G・10A」をクリアしただけ

――日本代表がW杯アジア最終予選を突破した後、「ロシア行きが決まって、日本代表にも新たな競争が始まる。好調の森岡選手の名前も挙がってくると思うが」と聞いたら、「自分の名前が出てきて欲しい。やっぱり代表でプレーするのはみんなの夢ですからね。W杯出場が決まったことで自分にもチャンスが広がってくると思う。うまいこと滑り込みたい」と言っていました。滑り込むという点について、今はどうですか?


 どうなんでしょうね。昨日の試合後もベルギーの記者から「今のゴール数(12)とアシスト数(13)ならW杯のメンバーに入れるか?」と聞かれました。でも、それを僕に聞かれても答えようがない。さらに、今は西野朗さんが日本代表の監督になって、どういうメンバーを選んで、どういうサッカーで戦うのかも分かりませんから。もし、僕が20ゴール20アシストという数字を残していたら、「これだけやってるんですから代表に入れます」と言えるんでしょうけれど、あくまで「10ゴール・10アシスト」をクリアしただけなので。


――11月と3月の代表マッチウイーク。ご自身では代表でスムーズにプレーできていたと思いますか? それとも難しさを感じていましたか?


 難しさはありました。


――どんな点で?


 チームとしてやろうとしていることが、うまく機能していなかったので、がんばって機能させようとした。そのことに対するトライをずっとやりましたが、難しさはありました。


――(アンデルレヒトの)ハイン・ファンハーゼブルック監督からは、森岡選手に対して「走った先で1対1になれ」という明確なオーダーがありました。ハリルホジッチ監督からはどのような要求を受けましたか?


 基本、守備ですね。


――まず守備?


 まず、と言うか、 守備のことがメーンでしたね。そこが全体として機能していませんでしたので。ハリルホジッチ監督としても、オフェンス陣の守備のところに物足りなさを感じていたでしょうし。


――「相手の攻撃を遅らせてくれ」「相手のボールを刈り取ってくれ」。そんなオーダーだったんでしょうか。


「ボールを奪い取る」ということですね。


――そこから間髪を入れず攻撃に切り替えろ、と。


 そうです。「奪った後はワンタッチ、ツータッチ」というのは言っていましたね。


――そこは、アンデルレヒトでやっている部分と似通っている気がするんです。守備さえハマれば、日々クラブでやってきたことが生きたのでは?


 似通っているのは、あくまで守備ですけれどね。でも日本代表も、アンデルレヒトもハイプレッシャーに行っていたので、その中でボールを取り切れればいいんですが、かわされてしまって陣形を下げられると、代表のように難しくなってしまいます。

「結果」と「自信」の微妙な関係

ベルギーでの活躍により、昨年11月に3年ぶりの日本代表招集を受けた

ベルギーでの活躍により、昨年11月に3年ぶりの日本代表招集を受けた【Getty Images】

――縦に速いサッカーに関して、メディアからは賛否両論ありました。選手としてハリルホジッチ監督のサッカーに戸惑いはありませんでしたか?


 どうなんですかね。クラブでも代表でも関係なく、結果が出ないと、自信を持てないとか、そういうのが出てきてしまうというのはありますよね。結果が出ていれば、どんなサッカーをしていても自信は出てくるものですし。結果が出ているか、出ていなかったか。その差は大きいですね。


――代表の合宿や試合で、チームの自信のなさを感じましたか?


 自分には(アジア予選より)前との比較ができませんが、うまくいっていないから自信が生まれなかったというのは、あったと思います。特にW杯が迫ってきているというプレッシャーがありますし、その中で、この時期にウクライナ、マリ相手にあの内容でしかできないということで、自信が生まれなかった。「このままで大丈夫なのか」という……。それは天秤のような感じです。自信がないから、そういう気持ちが上がってくる。自信があれば出てこない。


――ハリルホジッチ監督の解任という結末を迎えてしまいました。何か、思うところはありますか?


 個人的には、W杯で結果が出る、出ないによって、初めてサッカーの内容が判断できるかなと思うんです。ハリルホジッチ監督は、その前に解任になってしまったので。だけど、W杯で結果が出れば、解任したのが良かったということになるのかもしれません。結果論ですので、自分からは何も言えません。

中田徹

著者名
中田徹
著者紹介文

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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