退歩しながらロシアに臨む日本代表
西野新監督の「日本化」をどう見るか?

宇都宮徹壱

日本サッカーはどこまで退歩するのか?

JFAハウスに飾られていたハリルホジッチ前監督を中心とした巨大な集合写真

JFAハウスに飾られていたハリルホジッチ前監督を中心とした巨大な集合写真【Getty Images】

 会見の会場を出る時、隣接するサッカーミュージアムの壁面に飾られた、巨大な日本代表の集合写真が視界に入る。昨年の8月31日、日本がアジア最終予選でオーストラリアに勝利し、W杯ロシア大会出場を決めたときのものだ。ハリルホジッチ監督を中心に、選手たちが破顔一笑している。あれからまだ1年も経っていないのに、ずいぶん遠い昔のことのように思えてならない。この日、アジアのライバルをものの見事に粉砕した日本は、まさに前途洋々。この瞬間こそが、ハリルホジッチ監督時代の「絶頂期」であった。しかしこれを境に、日本代表は暗中模索の時代に入り、突然の終焉を迎えることとなる。


 そして、その後に続くのは、明確な目標も具体的な検証もないまま進行する「日本化」という名の退歩であった。繰り返しになるが、組織力や技術力や俊敏性といった「日本の強み」そのものを否定するつもりは毛頭ない。だが、それらを突き詰めた「自分たちのサッカー」が、世界の舞台で木っ端みじんに砕け散ったのが、前回大会で突きつけられた現実だったはずだ。そして大会後、ハビエル・アギーレとハリルホジッチという「世界を知る指導者」を相次いで代表監督に招へいしたものの、いずれも後味の悪い形で契約解除。その挙げ句の「日本化」に納得できるファンは、果たしてどれだけいるだろうか。


「原点回帰」と言えば聞こえはいいが、これは明らかな退歩であると言わざるを得ない。果たして、日本サッカーはどこまで退歩するのだろうか。スタッフ全員が日本人で臨んだ、第2次岡田監督時代(08〜10年)であろうか? それとも「規律よりも選手の個性」を重視した、ジーコ監督時代(02〜06年)であろうか。あるいはW杯未経験の日本人監督を送り出した、第1次岡田監督時代(97〜98年)であろうか? はたまた「コミュニケーションが取れる日本人監督を」という理由から起用された、加茂周監督時代(95〜97年)であろうか? ここまで来ると、それこそ「マイアミの奇跡」と同時代である。


 奇しくもこの日、最新のFIFA(国際サッカー連盟)ランキングが発表された。日本は相変わらず、出場32カ国中29番目の位置付けであるが、前回の55位から5ポイント下がって60位となった。世界のサッカーが目覚ましい進歩を続けている中、日本は流れに逆行するかのように退歩を続けながら、2カ月後の本大会を迎える。新しい指揮官が決まった以上、日本代表がロシアで終戦を迎えるまでの間は、私もネガティブな言及は極力控えようとは思う。それでも──。過去の失敗を顧みることなく、安易なナショナリズムとガラパゴス的な発想で世界に挑もうとする愚については、断固として「否」を唱えておく。

宇都宮徹壱

著者名
宇都宮徹壱
著者紹介文

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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